カゼなどをきっかけに、鼓膜の奥(中耳腔)に菌が入り、炎症をおこすのが中耳炎です。治療に通っても、治るまでに何カ月もかかったり、治ったと思ったら、またなったりするのが中耳炎です。どんな治療をするの?どのくらいで治るの?急に痛がったらどうしたらいいの?など皆さんが中耳炎の正しい知識を持って、安心して治療に取り組めるよう、まとめました。
耳と鼻は、鼻の奥で耳管と言う管でつながっています。 耳鼻科医が耳の中を見ているのは、鼓膜の色を見ています。その鼓膜の奥の部屋を中耳(ちゅうじ)といい、ここに炎症を起こしてうみがたまるのが中耳炎です。
菌が、耳の外からではなく、鼻の奥から入ってきます。 プールやお風呂の水が耳に入って中耳炎になることはありません。主にカゼがきっかけで鼻に増えた菌が、耳へ入って中耳炎を起こします。小さいうちは、しょっちゅう鼻カゼをひくので、カゼから中耳炎をよく引き起こします。子どもがよく中耳炎になるのは、カゼをひきやすいことと、管の仕組みが関係しています。子どもの耳の管(耳管)は大人と比べ、太く短く、傾きも水平に近いので、菌が耳に入りやすいからです。
まず、中耳炎になる時は急です。朝大丈夫でも、夕方腫れることがよくあります。痛みや熱が出ることもありますが、これも通常一晩か、2~3日でおさまります。 軽度の炎症の場合は抗生剤内服、点耳薬、場合により未治療で治癒します。しかし、炎症が強かった場合はこれで治ったわけではありません。痛みがなくなっても、鼓膜の奥の「うみ」が無菌の液となりたくさん残っているので、鼓膜が動けません。聞こえが良くないです。その後、ゆっくりゆっくり液が抜けていって聞こえが戻り、完治します。大事なことは、痛みがとれても完治していないケースがあるということです。 では、たまっていた液は、どこへ行くのか?入ってきたのと逆の方向へ、管を通って鼻の奥へ抜けます。ここに邪魔になる鼻水がないように、鼻の通りを良くすることが大切です。
具体的に、どのくらいかかるのでしょうか。 軽度の場合、液が溜まる事もなく1週間程度で治癒します。しかし、重度の場合は、中耳炎の液が完全に抜けるのは、早くても1カ月、量が多いと、2~3ケ月かかることもよくあります。なかなか治らないのではなく、何か月もかかって治るのが中耳炎です。根気よくがんばりましょう。
滲出性(しんしゅつせい)中耳炎って何? 皆さんはこの違いを知らず漠然と耳鼻科に通院していませんか?中耳炎は、治る途中で名前が変わります。痛みや腫れの強い、菌による炎症のあるはじめの1週間を急性中耳炎と呼び、ピークを過ぎて、残りのうみが無菌の液に変わりだんだん抜けて、治っていく時期を滲出性中耳炎と呼びます。滲出性中耳炎とは、「急性中耳炎が治ってきている途中ですよ」、という時期の呼び名です。
下の①から⑤の治療を行います
①まずは痛みを止める
中耳炎の痛みは、一晩か、続いても2~3日です。痛み止めで乗り切りましょう。もし、夜や休みの日に耳を痛がったら、手持ちの痛み止めを一回使ってみてください。それで痛みがなんとかなれば、次の日、耳鼻科に来れば大丈夫。飲んでも、痛みがとれない時は救急へ行きましょう。
②抗生剤を飲む
抗生剤は、炎症が強いとき、腫れが強い時に使います(中耳炎が原因で高熱が出ている時や、痛み止めでも痛みがとれない時など)。軽度の場合は点耳薬(耳の中に入れるさし薬)のみで加療することもあります。
③「みみだれ」が出たら、外だけ拭く
うみがパンパンにたまると、鼓膜に穴が開いて、自然にうみが出ます。時に血がでてびっくりすることもあります。しかし、その瞬間から、子供の耳の痛みはほぼとれています。耳の周りの「みみだれ」は拭きましょう。
耳の穴の中は、そのまま、何もしないでいいです。耳鼻科でうみを吸い消毒してきれいにします。
④菌がこれ以上入らないように鼻を吸う
「鼻が多いな」と感じたら、こまめに鼻を吸いましょう。家で吸い切れない時は、耳鼻科に来ましょう。鼻の通りをよくしておくと、早く治ります。
他の治療
子どものころ、中耳炎になると、鼓膜を切ってうみを出した経験がある方もいるでしょう。鼓膜を切ってうみを出す方法についての当院の考えです。
⑤鼓膜切開
鼓膜切開は、鼓膜を切ってうみを吸い出す方法です。当院では、極力避けていきます。しかしながら、抗生剤の効きが悪く高熱が続く場合や、経過をみていくうちに、うみが増えて、聞こえが下がった場合に行うことがあります。切開した穴がふさがるまで1週間位なので、切る事は特に心配ありません。当院では、耳に麻酔をしますので、痛みをほぼ感じませんので、ご安心ください。
腫れのピークを過ぎてから完治までの間で、聞こえを元通りにしていく時期です。液が無くなるまできっちり通うことが大切です。通院の目安は1週間か2週間ごと。順調に治っているか、みていきます。途中で鼻水が増えたら、1週間あけず、早めに鼻を吸いに来ましょう。痛くなくなると、何となく治っている気がして、来なくなる方がいます。中耳炎の治療のゴールは、鼓膜の奥の液が完全になくなり、聞こえが元に戻ること。しっかり治し切りましょう。治療を中断して液が残っていると、この液が、繰り返し中耳炎になる原因になります。その量によっては、2~3ヶ月かかることもあります。なかなか治らないなあと感じるでしょうが、これが中耳炎です。根気よくがんばりましょう。耳鼻科に行かない日は、鼻のつまり具合をよくみましょう。鼻がかめる子は、よくかんで。小さい子は、こまめに吸ってあげましょう。鼻通りを良くして、うみが抜けていく道を開けてやると、早く治ります。
鼓膜にチューブを入れる方法を考えていきます。初めはサラサラしていた液が、3ヶ月を過ぎると、ドロッと粘っこくなり、なかなか自然に抜けにくくなります。さらに、家族も気になるくらいの難聴がある場合には、鼓膜に小さいチューブを入れる方法をおすすめします。チューブについては、その状況になった場合に、詳しく説明します。
重症度によりますが、まず痛み止めや抗生剤で治療を開始します。鼓膜切開は極力避けていきます。その後の滲出性中耳炎に移行した症例に対しては、飲み薬、処置を併用しながら治り具合をみていきます。3ヶ月以上たっても、治る気配がない場合、聞こえが良くない場合には、鼓膜にチューブを入れる方法をおすすめします。
中耳炎はカゼや鼻づまりが原因なので、特別指示がなければ、入浴、シャンプー、プールは、普段通りにやってかまいません。耳に水が入って中耳炎になることはありませんし、悪化することもありません。予防接種も、熱や痛みがなければ、耳鼻科としては問題ありません。
お家では、鼻通りをよくみて、つまっていたら、こまめに吸いましょう。鼻通りを良くしておくと、中耳炎の予防になります。小さいうちはカゼをひきやすいので、中耳炎になるのは仕方がないですが、よほど腫れなければ、意外と痛がりません。そのため、気づかずに中耳炎になったまま、うみが残っている子もいます。カゼをひいたり、鼻が多いときは、耳は大丈夫かな?と、早めにチェックに来ましょう。軽いうちなら早く治ります。カゼをひいたらすぐ耳鼻科に受診をお勧めします。
外耳炎とは、耳介(外側に出ている耳)と鼓膜までの外耳道を合わせた外耳(いわゆる耳と耳の穴)に炎症が生じる疾患のことです。耳かきなどで外耳道の皮膚を傷つけてしまい、そこから細菌や真菌(カビ)が感染して発症するケースがよくみられます。糖尿病など免疫力の低下する疾患を持っている人では、外耳炎を繰り返すことがあります。
耳の痛みと痒み、灼熱感(耳がヒリヒリと熱く感じる)などが挙げられます。症状が進行すると臭いを伴う黄色、または白色の耳だれが出るようになります。外耳道が炎症によって腫れ上がる「びまん性外耳炎」が起こると聴力の低下を招くため、中耳炎と紛らわしい場合もあります。また、耳におできができる「限局性外耳炎」では、おできが破れて出血することもあります。
特別な検査をしなくても症状から診断がつきます。原因となる病原微生物が細菌なのか、真菌(カビ)なのかで治療法が変わってきますので、耳だれの培養検査を行うケースもあります。
軽度であれば2~3日で自然に治りますが、治療が必要な場合は脱脂綿や吸引機などを使って軽く耳掃除を行ってから、局所への点耳薬投与、軟膏塗布などを行います。びまん性外耳炎は耳を清潔にした上で、抗生物質の塗布と投与を1週間ほど行います。限局性外耳炎では、おできを切開して膿を出し、抗生物質を塗布します。痛みが激しいようなら、鎮痛剤を用います。何より大事なことは、耳の中を触らないようにしましょう!
耳あかとは、空気中の埃、皮膚の残骸、および外耳道にある耳垢腺や皮脂腺という器官から出る分泌液などが混ざり合ったものです。耳あかが外耳道いっぱいに溜まった状態を「耳垢栓塞」と言います。耳あかには乾性と湿性の2種類があり、これは遺伝的に決まっています。乾性ならば自然に排出されるのですが、湿性ですと外耳道に付着したまま固まりやすく、耳あかを取ろうとして逆に奥へと押し込んでしまったり、入浴時などに耳あかが膨張して閉塞し、突然耳垢栓塞の症状が現れたりします。
耳の閉塞感や圧迫感を招き、時には難聴をきたすこともあります。
耳あかを除去しても聞こえが悪いような場合は、聴力検査を行うことがあります。
耳の中を顕微鏡で見ながら、丁寧に耳あかを取り除きます。耳あかが硬くなっていて取りづらいような場合は、薬で軟らかくしてから除去します。痛みが強かったり、頑固でなかなか取れなかったりする場合は、数回に分けて除去を行うこともあります。
耳の中を顕微鏡で見ながら、丁寧に耳あかを取り除きます。耳あかが硬くなっていて取りづらいような場合は、薬で軟らかくしてから除去します。痛みが強かったり、頑固でなかなか取れなかったりする場合は、数回に分けて除去を行うこともあります。
ある時、突然に耳が聞こえなくなる疾患です(通常は片側)。突発性難聴の原因はまだよくわかっておらず、急激に発症する感音難聴のうち、原因不明のものを突発性難聴と呼んでいます。早く治療を開始すれば聴力が回復する可能性が高いので、とにかく早期に治療することが大切です。
突然に耳が聞こえなくなる(高度の難聴)と同時に、耳鳴りや耳がつまった感じ、めまいや吐き気を生じることもあります。
純音聴力検査が必要です。場合により、精密な聴力検査や平衡機能検査も必要になります。また、非典型な聴力低下や、治癒しなかった症例には、MRIにて、腫瘍の有無を調べる事をお勧めします。
突発性難聴については、いろいろな治療法が検討されていますが、どのような治療法が最も有効なのかは明らかにされていません。もっとも標準的に行われている治療はステロイド投与です。糖尿病などの持病がある方はステロイドの投与により持病が悪化する可能性がありますので治療についてはよく相談する必要があります。突発性難聴の発症前には精神的・肉体的疲労やストレスを感じていることが多く、心身ともに安静にして、ストレスを解消することが肝心です。いずれにせよ、発症後早期の治療が何より重要です。
騒音下での職業など、長期間騒音に曝されているうちに、徐々に進行する難聴を騒音性難聴と言います。爆発音やロックコンサートの演奏など、強大な音のために急性に起こる難聴は“音響外傷”です。
多くの場合、難聴に加えて耳鳴りを伴います。
難聴の程度を調べるために純音聴力検査が必要となります。病気の初期には、4,000Hz(ヘルツ)に特徴的なC5dipと呼ばれる聴力低下像がみられ、比較的容易に診断できます。また騒音下作業の職歴の有無が、騒音性難聴の診断には極めて有用です。
急性に起こった音響外傷では、ステロイドが有効です。長期間にわたる音響被ばくによって生じた騒音性難聴では、ダメージを受けた有毛細胞を元に戻すことは、現在の医療では不可能です。将来に向けて難聴の進行を抑えるには、遮音性の耳栓を使用する、長時間の音響被ばくを避ける、ときどき耳を休ませる、規則正しい睡眠や適度な運動を心がける、などが大切です。また、定期的に聴力検査を受けて難聴が進行していないかどうかを確認することも必要です。
老化に伴って生じる聴力低下のことを「老人性難聴」と言います。個人差があるものの、耳の老化は通常40歳代から始まり、60歳代からは急速に進行するようになります。耳あかや中耳炎などが原因で聞こえが悪くなっているケースもあり、この場合は治療によって聞こえが改善することもありますので、年のせいだと諦めてしまわず、一度は耳鼻咽喉科を受診してください。
老人性難聴では、「高い音(高周波数)が聞き取りにくい」「言葉のききとりが悪い」「早口がわかりにくい」「大勢の人なかでは会話が聞き取りにくい」などの特徴があります。
純音聴力検査(聞こえの異常の有無やその程度、また障害されている大体の場所を調べる検査)や語音明瞭度検査(言葉の聞き取り能力の検査)を行います。
老人性難聴は、聴力の生理的変化と考えられていますので、一般には特に治療を行いません。そして日常生活に不都合が生じるようなら、補聴器を使って聴力を補うことをお勧めします。補聴器にもいろいろなタイプがありますので、自分に適した補聴器を選ぶためにも、まずは耳鼻咽喉科で相談しましょう。
メニエール病というと「若い女性がストレスでめまいを起こす病気」というイメージがあるのではないでしょうか。メニエール病の原因はずばり「内リンパ水腫(内耳のリンパが増え、水ぶくれの状態)」です。その根底にはストレス・睡眠不足・疲労・気圧の変化・几帳面な性格などがあると考えられています。内耳には①聞こえの細胞が詰まっている蝸牛と、②平衡機能を司る三半規管と耳石器があります。この両方もしくはどちらか一方が強く水ぶくれになるかにより症状が異なります。蝸牛が強く水ぶくれになれば、めまいは感じず難聴だけを自覚します。水ぶくれが弱ければ難聴を自覚せず、「耳が詰まった感じ」や「耳鳴り」、「音が響く感じ」のみ出現する場合もあります。反対に三半規管・耳石器が強く水ぶくれになれば、難聴や「耳が詰まった感じ」などは感じず、めまいのみを自覚します。めまいの強さも「グルグル回転する激しい」ものから、「フワフワ雲の上を歩いている感じ」のものまでさまざまです。めまいの持続時間は10分程度から数時間程度であることが多く、数秒~数十分程度のきわめて短いめまいが主である場合、メニエール病は否定的です。
めまい=メニエール病と考えがちですが、メニエール病には厳密な診断基準があり、それを基に診断します。それは「難聴、耳鳴り、耳が詰まる感じなどの聴覚症状を伴うめまい発作を反復する」です。ここで一番大切なのは「反復する」という点です。めまい発作や難聴発作が1回起きただけではメニエール病とは診断できません。この診断基準を満たし、且つ類似の他の病気を除外できたものを「メニエール病確実例」と診断します。また、聴覚症状のみ、めまいのみをくり返すタイプは「メニエール病非定型例」と診断します。非定型例は確実例よりさらに除外しなければならない病気が多く、厳密な検査と経過観察をすることが推奨されています。
メニエール病は「くり返す」エピソードがあって初めて診断できます。従って十分な問診が大事です。めまいの診察では体のバランスを調べる検査(目を閉じて足踏みしてもらう検査などがあります)や眼振検査(目の動きの異常を調べる検査)を行います。聴覚症状に対しては耳内を観察し、聴力検査を行います。症状がめまいのみでも、隠れた難聴がある場合を想定して聴力検査を行う必要があります。逆に聴覚症状のみでも、隠れためまいがないか眼振検査を行う場合があります。中枢性疾患の除外には、他の脳神経症状がないか神経学的診察も欠かせません。体のバランスを調べる検査で小脳や脳幹の障害が発見される場合があります。
強い発作で嘔気が強く、薬を飲む事も出来ない時は安静の上でめまい止めの点滴を行います。内服が可能であれば、めまい止め・利尿剤を中心に抗不安薬や循環改善薬・ビタミン剤などを組み合わせて使用します。発作の初期に上手にめまい止めや抗不安薬などを用いることで、大きな発作の予防や症状の軽減を図る事ができます。しかしメニエール病にはストレス・睡眠不足・疲労が関与していると考えられており、薬による治療だけでは根本的な治療にはなりません。「薬によって症状を抑える事が出来る」事で少し安心しつつ、ゆっくりとストレスの原因を見つめ直したり、生活習慣を正すことが必要です。
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