のどは細菌やウイルスによる感染を起こしやすいため、その粘膜下には、リンパ組織(リンパ球と抗体の産生を行う組織)が発達しています。このリンパ小節の集まりを扁桃と言い、口蓋垂(のどちんこ)の両側に見えるアーモンドの形をした部分を口蓋扁桃と呼びます。この口蓋扁桃が通常よりも大きくなった状態が、扁桃肥大です。扁桃肥大を招く主な原因は、細菌とウイルスの感染です。時に、生理的に大きくなっているケースもあります。
軽度なら自覚症状はありませんが、気道(鼻から肺までの空気の通り道)を狭くするため、いびきや睡眠時無呼吸症候群の原因となることがあります。また、口蓋扁桃が大き過ぎると、ものを飲み込む際に不快感や痛みが出ることがあります(嚥下障害)。
専門医が診察をすれば、診断がつきます。必要に応じて、睡眠時無呼吸の検査をすることがあります。
急性の炎症に対しては抗菌薬(原因が細菌の場合)や痛み止めなどの薬物療法が中心になります。長期間にわたって肥大・閉塞症状が持続したり、感染症を繰り返したりするようなら、手術による摘出をおすすめします。
扁桃炎とは口蓋垂(のどちんこ)の左右に一個ずつある口蓋扁桃というリンパ組織に、細菌やウイルスによる急性の炎症が起こる疾患です。健康な人でも、扁桃にはもともと、いろいろな細菌が潜んでいます。風邪ウイルスの感染や疲労がきっかけとなり、いつもはおとなしい細菌が悪さをして急性扁桃炎を発症します。時に、溶血性連鎖球菌に感染することで急性扁桃炎や急性咽頭炎などを起こすことがあり(溶連菌感染症)、子どもに多く見られます。この場合は、リウマチ熱や急性糸球体腎炎、アレルギー性紫斑病などの怖い合併症を引き起こすことがあり、要注意です。
風邪のような症状(高熱や寒気、頭痛、全身のだるさ、関節痛)と強い咽頭痛が現れます。のどの奥を見ると、両脇が赤く腫れているのが観察されます。これが扁桃炎に特徴的な症状と言えます。
専門医の視診により、多くは診断がつきます。ケースにより、血液検査や尿検査、細菌検査などが行われます。
抗菌薬や消炎鎮痛薬、うがい薬などで治療します。安静や水分の補給も大切です。
咽頭に炎症が生じた状態です。風邪、インフルエンザなどによるウイルス・細菌感染、刺激ガスや粉塵の吸入、喫煙、声の酷使などによる粘膜の炎症が原因となります。
のどの痛みや痒み、声がれ、咳、痰などの症状を呈します。重症化すると急性喉頭蓋炎などを合併し、窒息のおそれも生じるので、呼吸困難が伴う場合は要注意です。
喉頭鏡やファイバーにより咽喉頭の観察を行い、炎症部位や程度を把握します。気道狭窄が無いかどうかも確認します。
風邪に準じた全身的な治療や対症療法、吸入治療などを行います。重症化して気道狭窄がみられる場合は、抗生剤の点滴投与をします。外科的処置(気管切開)が必要になるケースもあります。
急性扁桃炎に続いて起こり、口蓋扁桃(こうがいへんとう)の周囲に炎症が及んで扁桃周囲炎が発症します。さらに菌が膿のかたまりをつくると、扁桃周囲膿瘍と呼ばれる状態になります。若い成人男性に多くみられます。 扁桃炎の段階で、悪化を防がなければならず、初期の対応の遅れが重症化を引き起こします。
のどの腫れ、痛み、発熱が生じ、膿瘍を形成するに及ぶと、顎(あご)が開きにくい、発音しづらい、のどの片側面が強く痛む、飲み込みにくい、強い口臭などの症状が現れます。
血液検査、CT検査、頸部の超音波検査などが行われます。
この段階になれば、抗菌剤だけでは効かないケースがほとんどで、膿瘍に穿刺(せんし)や切開をして排膿処置をすることがあります。多くの場合、入院加療が必要になります。
のどの奥にある喉頭蓋(こうとうがい)という部分に炎症が起きた状態です。喉頭蓋が急激に腫れるため、ひどい場合には窒息に至る危険性があり、耳鼻咽喉科の救急疾患の一つです。通常は細菌感染が原因で、そのほとんどはインフルエンザ菌(インフルエンザウイルスとは異なります)です。
はじめに激しいのどの痛み、飲み込む時の痛みなどがみられます。やがて呼吸困難や喘鳴(ぜーぜーする)が現れてきます。さらに進行すると、呼吸困難をきたし、窒息に至ることもあります。
喉頭鏡やファイバーなどを用いて、喉頭蓋の腫れを確認します。
窒息する可能性のある危険な病態ですので、とにかく窒息しないように、気道を確保することが重要です。窒息の危険がある場合は、口から管を入れたり、のどの一部を切って管を入れたりします。呼吸困難が無い場合は、細菌感染に対して抗生剤、腫れを軽くするためにステロイド薬、のどの奥の空間を広げるために気管支拡張薬を投与し、呼吸困難が生じないかを厳重に観察しながら治療します。
口内炎は、口の中やその周辺の粘膜に起こる炎症の総称です。ビタミン不足、疲労やストレス、口の内側を噛むなど、様々な原因で起こり、口の中の粘膜であれば頬の内側や唇の内側、歯ぐき、舌など、どの部分にもできます。全身疾患の一つの症状として起こるケースもありますので、口の中のどこにできているか、多発していないか、繰り返していないか、治りにくくはないか、などを総合的に判断する必要があります。稀に、口内炎だと自己判断され、実は舌がんだったというケースもあり、1ヶ月も続く口内炎は、必ず耳鼻咽喉科を受診してください。
口内炎ができると、熱いものや冷たいものがしみたり、食べ物が触れただけでも痛みが強まり、食事を摂れなくなったりすることがあります。
全身性の病気が疑われるような場合は、血液検査などが行われる場合があります。
ステロイド軟膏や抗菌薬などによる薬物療法、ビタミン剤投与などが行われることがあります。原因疾患がある場合は、その治療を行います。治りにくいケースの場合、がんの可能性もあり、一部組織を採って調べることもあります。
味がまるでわからなくなったり、味覚が鈍磨したり、本来の味とは違った妙な味に感じられたりする障害です。口が苦い、塩辛いなどと訴える自発性の異常味覚もあります。高血圧薬、抗生物質ほか、各種薬剤の長期にわたる使用によって生じる薬剤性の味覚障害がよくみられます。
甘味、酸味、塩味、苦味、旨味などの味覚が低下したり、何を食べてもまったく味を感じなくなったりすることもあります。また、口の中に何も無いのに塩味や苦味を感じたり、何を食べてもまずく感じられたりすることもあります。
症状に応じて、味覚検査や血液検査などが行われます。
薬剤が原因で味覚障害が起こっているような場合には、医師に相談のうえ、服用の中止または副作用の無い薬剤への変更をしてもらいます。血液中の亜鉛不足により、舌の表面にある味を感じる細胞(味蕾)の新陳代謝が十分に行われなくなるために起こることもしばしばですが、その場合は亜鉛を補給する治療を行います。舌にカビが生えていて、痛みを伴ったりする味覚障害も稀に見られますが、そうした場合は、カビを除去する治療を行います。
唾液をつくる耳下腺(耳の前から下にある)、および顎下腺(顎の下にある)に炎症が生じた状態で、いろいろな原因で起こります。主な原因はウイルスや細菌の感染です。ウイルス性の代表的なものとしては、流行性耳下腺炎、いわゆる「おたふく風邪」があります。唾液腺炎を発症すると、抗菌作用、粘膜保護作用、消化作用など、唾液のもつ機能が低下します。
炎症部位の痛み、口の中の乾燥、唾液の減少、発熱、寒気などがみられます。
血液検査や画像検査(超音波検査、CT検査など)が行われます。
細菌性のものに対しては抗生物質を用います。ウイルス性に対しては、全身的には安静と解熱薬の投与、局所的にはアイシングとうがいを行います。
リンパ管は全身に張り巡らされていますが、その節々には豆のような形をしたリンパ節があり、細菌感染などから体を守っています。くび(頸部)にもたくさんのリンパ節があり、口や咽喉からの細菌などの侵入に備えています。このリンパ節が炎症を起こして腫れた場合を、頸部リンパ節炎と言います。多くは口や咽喉の細菌感染による炎症ですが、ウイルス感染や結核などによる場合もあります。
細菌の感染によるものでは、歯や口、咽喉の痛みなどの先立つ症状があり、しばらくしてから、首に痛みのある腫瘤(こぶ)が触れるようになります。多くは発熱を伴います。悪性腫瘍からくる腫れの場合は痛みが無く、リンパ節が硬くなって、しこりのようになります。
血液検査や超音波検査、画像検査などが行われます。リンパ節の腫大がひかない場合は、リンパ節の細胞を採る検査が必要になることもあります。
消炎鎮痛剤などによる対症療法が主体になり、症状が強い場合はステロイドを用います。細菌性の炎症では、抗生剤の投与が必要です。
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